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「アスレジャー」のススメ

人々はオシャレするのに疲れている

「春物の服を買わなくちゃ。」
「セレモニースーツを用意しないと。」
「いつもパンツだけど、スカートもはけるようにならなくちゃ。」
「40 代になったから恥ずかしくないネクタイ買っとかないと。」

大昔、日本の景気が良かった頃はまだしも、現代では人々がおしゃれにかけられるお金は大きく減っている。にもかかわらずSNS では、普通の主婦や働く女性が、おしゃれなファッションやおしゃれな生活を毎日インスタにアップして、マウンティング合戦を繰り広げている。ファッション業界はファッション業界で、以前より売るのが難しくなった服をなんとか売るために、「こういうときはこれ!」と、さまざまなシーンでの服装をますます細かく提唱している。しかし、そもそもおしゃれとは、“今”の気分を取り入れるためにトレンドアイテムを身につけたり、シーズンごとに買い物計画を練って欲しかったアイテムを手に入れたり、新しいブランドやショップをのぞいてみたりと、もっと自由で、楽しくて、ワクワクするものだったはずである。それが今やトレンドでさえも、「今はこういう格好をしなければ」、「ネイルくらいしないと恥ずかしい」という、「ワクワク感」ではなく、「義務感」や「責任感」になってしまっている。それに、多くの人は生活を回し生きるのに必死で、おしゃれのことを考える余裕がないのである。以前は好きで楽しんでいたおしゃれも負担にしか感じられない。それが今の時代のおしゃれ感なのではないだろうか。ここに来て、行き過ぎたファッションへの疲れや飽きが出てきているのである。

ナチュラルに過ごしたい

以前は「ジムにはジム用のトレーニングウェア」、「街着には流行を反映した服」といった、TPOに応じた着こなしが当たり前であった。しかし、前述した「オシャレへの疲れ」から、「ジムでも街着でも対応できる」シーンレス・TPOレスな着こなしへの移行が確実に進行してきている。ライフスタイルが洗練される中で、健康への関心が高まっており、「華美な見た目よりも着心地の良さや動きやすさを重視する着こなし」への志向が世界的な流れとなってきている。派手なファッションをするのは大変疲れるものであるため、シンプルスタイルや着心地の良いファッションに傾いていっているのだろう。そのため、今までにも「スポーティー」や「エフォートレス(努力しない、気取らない)」、「ノームコア(ラフでカジュアルな、極めて普通の格好)」といったものがトレンドになったこともあった。

ヨガウェアから生まれた「アスレジャー」

そんな中、今までに流行した「スポーティー」「エフォートレス」「ノームコア」のいずれも網羅しつつ、また新しい要素をもったスタイリッシュなコーディネートがブームになりつつある。それが「アスレジャー」である。アスレジャーとは、「アスレチック(athletic=運動競技)」と「レジャー(leisure=余暇)」を組み合わせた造語(athletic+eisure=athleisure)である。スポーツウェアを中心に構築されたファッションスタイルで、2000年の初めにヨガブランド「ルルレモン」が発信したスタイルが原点となっている。ヨガが盛んなアメリカはNY、西海岸を中心にヨガウエアの発展形として広まった。アスレジャーには「着飾りすぎた・いき
すぎたファッションはもう飽きたし、疲れた。」という世の風潮が大きく反映されていて「頑張り過ぎない、リラックスした雰囲気」や「こなれ感や抜け感」といった時代の流れを受け継ぎながら「見た目よりも、快適さを重視したエフォートレスなスタイル」なのが特徴である。
ピンヒールを履いていた女性にも、楽でオシャレなスニーカーが支持されたように、クールなスタイルで快適な「アスレジャー」は、女性を中心に需要が大きく伸びてきていたのだが、最近欧米ではすでにメンズファッションにおいても広がりを見せている。そのため、ナイキやアディダスなどの大手スポーツブランドやアパレルブランドが参入するホットな市場へと成長してきている。「お洒落はガマン」と言われていた少し前の時代から、「究極の普通」であるノームコアが流行り、リラックス感を重視したエフォートレスなスタイルが流行ってきた。いま注目のアスレジャーも、肩肘張らずにファッションを楽しむ近年の傾向が顕著に現れたスタイ
ルなのである。

ヨガ人口の増大がアスレジャーを日常着にした

ここ数年、米国都市生活者の間では、自分自身の内面と向き合う“内面回帰”の潮流があり、Well-being(=ウェルビーイング、身体的、精神的、社会的に良好な状態)やMindfulness
(=マインドフルネス、瞑想などでストレスを軽減する心理学的治療)といったキーワードがトレンドとなっている。アスレジャースタイルの基本アイテムにはヨガウェアが多く含まれるが、米国では90 年代のマドンナをはじめとして、これまで数多くのセレブたちがヨガを実践し、健康的で質の高い生活を消費者に提案、ヨガブームをリードしてきた。いまやヨガに親しむことは、現代の都市生活者の定番のアクティビティになっている。その結果、米国の2016年のヨガ人口はこの10 年間で2.2 倍に成長し、2017 年現在3,670 万人に達している。実に生産人口(15 歳~ 64 歳)の6 人に1 人がヨガに取り組んでいることになる。さらに米国では、人間が本来持つ自然治癒力を利用して疾病を予防したり改善させる「補完代替医療(CAM)」に大きな注目が集まっている。ヨガは漢方薬などと同様にCAM に分類されており、ヨガの複式呼吸や瞑想が心身に与える影響についての科学的・医学的な検証も盛んに行われている。いざ病気になれば莫大な医療費支出を余儀なくされる米国市民にとっては、自分自身で病気を予防し、健康を守ることは、不安定な社会の中でのひとつの生活防衛手段でもある。

アスレジャーは今の時代を象徴している

アスレジャーはニューヨークなどの都市生活者を発信源に、すでに米国全土でスタンダードな日常スタイルといえるまでに普及している。代表的なアイテムはレギンスやタンクトップ、ジョガーパンツ、パーカーなどで、カラーリングはモノトーンやシックな中間色が多く、デザイン面でも普段着とコーディネイトしやすくバランスがいい。素材は、ストレッチ性や軽量性などを重視した快適で着心地の良いものが多く採用されている。最近のニューヨークでは、エグゼクティブ層までもがアスレジャースタイルで会議にのぞむこともあるというほど、ライフスタイルの中に浸透している。背景として、消費者の価値観が物質的な豊かさや外見的な美しさよりも、内面がより健康であることに、急速にシフトしていることも大きい。政治的にも経済的にも先行きの不透明感が強まり、予測不能な自然災害や人災・テロも多発する中、心身ともに健康な状態を維持することは消費者にとって重大な関心事だ。アスレジャーは、そんな今の時代の気分を象徴するスタイルとして受け止められているようだ。

ノームコアやスポーツミックスとの違い

では、以前にもあったノームコアやスポーツミックスなどのカジュアル系と、アスレジャーは何が違うのだろうか。アスレジャーは明確な定義があるわけではないが、スポーツミックスなどと比べると、より本格的なスポーツアイテムを日常のコーディネートに取り入れたファッションになる。トレーニングできるスタイルでありながら、そのまま日常生活が送れるという、「シーンレス・TPOレスな着こなし」が、従来のスポーツミックスやノームコアとの大きな違いである。スポーツミックスはファッションの中にスニーカーやジャージなどを合わせる程度だったが、アスレジャーでは全身からスポーツ感を感じられるものとなっており、ジムから今出てきたかのようなコーデもよく見かけられる。

なぜ「アスレジャー」が人気なのか

リラックスできる着心地や快適さ

アスレジャーの最大の魅力は着心地の良さ、動きやすさ、過ごしやすさにある。レギンスやスニーカーなど、トレーニングジムで使うようなアイテムを多用するため、ハイヒールの歩きにくさ、スキニーの締め付けなどのストレスから解放され、思う存分身体を動かすことができる。しかも、基本的にはスポーツウェアなので、吸水性や速乾性にも優れていて実用性も抜群。毎日を快適に過ごすことができる。また、アスレジャーのスタイリッシュさも魅力も一つ。スポーツウェアをコーデに取り入れることで、ストリートやカジュアルなスタイルも叶えてくれる。使いやすさもスタイリッシュさも兼ね備えているのがアスレジャーの魅力なのである。

シーンレス・TPO レス

前述したように「オシャレへの疲れ」から、「ジムでも街着でも対応できる」シーンレス・TPOレスな着こなしへの移行が確実に進行してきている。アスレジャーが世界的にブームになったことで、各ブランドからは、アスレジャーのスタイルに合わせた、日常的にも(シーンやTPOを問わず)使いやすいアイテムが次々と登場している。現在では、カラーやデザインも豊富でスポーツウェアとは思えないほど上品でフェミニンなデザインのアイテムも登場している。

健康志向の高いアッパー層からの支持

「アスレジャー」ブームに火をつけたのは、海外セレブやモデル達である。彼女たちは、健康や美容に対する関心が高く、食生活への配慮はもちろん、日々のトレーニングにも余念がない。セレブ達はトレーニングをよく行っている為、元々トレーニングウェアを着ることが多く、トレーニングウェアにジャケットを羽織ったようなスタイルをよく見かける。テイラー・スウィフトやミランダ・カーなどが実践しているスタイルである。そんなセレブたちがヨガ帰りにパパラッチされ、ヨガウェアの上にコートを来ている姿が「街着としてカッコいい」と言われるようになり、一般の人たちにも広まっていったのである。

アスレジャーは簡単に着こなせる

前述したように、アスレジャーはスポーツウェアを中心に構築されたファッションスタイルである。しかし、「セレブが着ているから格好良く見えるだけじゃないのか」、「スタイリッシュさを出すって難しそう」、「リラックスしてスポーツウェアを40 代が着たら、ただのコンビニに行くオッサン/オバチャンにならないか」など、「どう組み合わせたらいいかわからない」、「難しそう」と思っている人は、意外と多いのではないだろうか。確かに、やりすぎると浮いてしまったり、バランスがとれないとダサい着こなしになってしまったりする。しかし、アスレジャーを簡単に着こなせるためのアイテムや色、組み合わせが存在するため、そういったことを知っておくと、アスレジャー初心者でも簡単に着こなせるようになるのである。
そこで、初心者でもアスレジャーを気軽に挑戦できるよう、その方法を紹介する。
ヨガウェアの上からコートを羽織るようなファッションスタイルは、なかなか米国のセレブたちの着こなしをそのまま真似ることは難しいと思われるので、パーカを合わせる、あまり突飛な色ではないランニングシューズを合わせる、といったところからスタートさせるのがアスレジャー初心者には良さそうに感じられる。

① モノトーン/ベーシックカラー

スポーツアイテムはカラフルなものや派手な柄のものが沢山あるが、初めてチャレンジする場合は、派手な柄を使うのが怖いものである。そのような時は、ベーシックな色やモノトーンを使ってコーデしてみる。黒を貴重としていれば失敗しにくいのでおすすめ。ただ、黒いだけだとオシャレに見えにくくなるので、ワンポイントでカラーを入れるなど工夫してみるのがよい。

② 無地

柄が派手なものに恐怖心がある場合は、まずは無地のアイテムを使ってみる。無地のアイテムでも、上手く組み合わせてジャケットを羽織るなどすればちゃんとオシャレに見える。プリントが強いものはストリート感が出すぎることがあるので、まずは無地アイテムで慣れていき、上手くコーデが作れるようになったらチャレンジしてみよう。

③ 下だけスポーティー

これからチャレンジする場合、どうすれば街中でも浮かないようにまとめられるかが気になるところである。もし不安ならば、下だけしっかりスポーティーにするスタイルを作ってみるといい。ジャージやスウェットパンツとスポーティーなスニーカーを履くだけで、それらしくなるので簡単である。上のジャケットやパーカーなどの下に着るものもスポーツアイテムにすれば、よりそれらしくなる。

④ コート×スポーツ

ただスポーツアイテムを使うだけではなく、オシャレ感を強く出したければ、スポーツアイテム+コートがおすすめ。ロングコート×スポーツは相反するものであり、中和することでオシャレに見える。また、レジャージャケットもおすすめで、セットアップ+スニーカー+レジャージャケットで簡単にコーデが完成する。色使いも大切なので、センスよく、あえて着ている感がしっかり出るようにまとめよう。

⑤ レギンス

アスレジャーらしさをしっかり出すならレギンスは外せない。ジャージやスウェットでも出来るが、取り入れられるならレギンスを使ってみる。あまり慣れていない場合はショートパンツと合わせて使うと気軽に履ける。レギンスはレディースのイメージが強いが、メンズでもショートパンツと組み合わせれば自然に履ける。

アスレジャーにオススメのアイテム

① スウェットシャツ・パンツ

スポーティな雰囲気を加速するのに有用なスウェットパーカーを使用するのもおすすめ。ジョガーパンツとの相性も抜群。基本的には、パーカーもパンツもシックなカラーを選ぶのが基本。カジュアルになり過ぎないように着こなすのが大切なポイント。

② ジョガーパンツ

ジョガーパンツ単体にこだわることで一歩先を行くアスレジャースタイルに。例えばジョガーパンツ流行の火付け役と言われるパブリッシュのジョガーパンツなら、デザイン性や一味ちがう光沢素材などで一歩リードできるだろう。ジョガーパンツ、スウェットパンツの定番といえばナイキのテックフリース。毎年デザインが微妙に変化していくのですでに持っている人もナイキショップをのぞいてみてはいかがだろうか。

③ レギンス×ショートパンツ

アスレジャーらしさを強く演出するなら「レギンスx ショートパンツ」。初挑戦なら同系色・同じトーンが組み合わせやすいだろう。ショートパンツは膝上が基本。また、スポーツブランドの場合は、ロゴの大きさや位置がポイントだ。レギンスの場合には高い位置にロゴがあればショートパンツでロゴを隠すことも可能。

④ ランニングスニーカー

アスレジャーの足元には、ランニングスニーカーがベストマッチ。定番のテニスシューズのスタンスミスなども良いが、これから購入するならナイキのローシシリーズやハラチシリーズ、プレミア価格だがアディダスのYeezy Boost 350 など、ほどよくハイテク感・未来感のあるモデルも有力な選択肢になるだろう。

アスレジャーオススメブランド

① NIKE

アスレジャーに挑戦してみたいが、どのブランドの服を買えばいいのか迷った際は、「ナイキ」を選んでみよう。ナイキはスポーティーなアイテムが多く、海外セレブもよく着こなしているブランドである。スニーカーはもちろん、メンズ・レディースのタンクトップなども高評価されており、動きやすくておしゃれなアイテムが沢山ある。

② アディダス

アディダスはファッションアイテムも沢山販売している。アディダスはジャージやスニーカーを混ぜる時に重宝する。特に、スタンスミスのスニーカー、3 本ラインのジャージは定番ファッションとして愛されている。これからチャレンジする場合は是非チェックしておこう。飽きのこないクラシックなアイテムから、コラボアイテムまでデザインも豊富で、性別・年齢問わず人気なアディダス。アスレジャー”スタイ”を作る上で欠かせないブランドのひとつである。

③ ルルレモン

レギンスで迷った際は、ルルレモンのレギンスをチェック。ルルレモンはアスレジャートレンドを巻き起こしたブランドで、海外でも大人気である。レギンスだけじゃなく、一枚でもお洒落でヘルシーに着ることができるトップスなどのアイテムも販売している。メンズ製品もあるが、基本的にはレディース製品のブランド。

④ アロヨガ

レギンスでもう一つチェックしておきたいブランドが「アロヨガ」。ヨガウェアを販売しているブランドで、セレブやモデルに愛用者が多いことで有名。中でも、特に人気のあるアイテム「ヨガレギンス」は、アスレジャーを意識し、タウンユースしやすい(シースルーやメッシュなど…)デザインとなっていて、とにかくお洒落。アスレジャーにトライするなら、マストバイなアイテム。

アスレジャー着こなし事例

① アスレジャー×レザージャケットスタイル

ジャージーパンツやスニーカーを合わせたスポーツテイスト溢れるボトムに対して、トップにはアウターとしてレザージャケットを羽織ったメリハリのあるスタイリング。スポーツウェアとレザージャケットのような革製品がミックスされたスタイリングはアスレジャースタイルならでは。

② アスレジャー×ウィンドブレーカー

ウインドブレーカーにレギンスを合わせたものは、普段使いはもちろんレジャーシーンにぴったり。登山やキャンプなどのアウトドアシーンにもおすすめの簡単アスレジャーコーデ。

③ アスレジャー×スウェットパンツコーデ

スウェット系のアイテムは、コーデをラフでカジュアルにしてくれるし、着用していてもストレスがなく着心地がいい。また、スウェットパンツだと、トップスはシャツ、パーカー、ジャケットなど、様々なものと合わせやすい。スウェットパンツ自身も細身のものからワイドなもの、長さもいろいろあるので、トップスに合わせて変えてみるのもいいかもしれない。

④ アスレジャー×モノトーンスタイル

トレーニングウェアと思わせないのがポイント。ダークトーンやモノトーンでまとめるのが正攻法だ。またトップスのデザインにこだわると効果大。非・スポーツブランド、例えばモードブランドのアイテムを一点取り入れてみるだけでも印象は大きく変わってくる。

おわりに

「エフォートレス」や「ノームコア」をはじめ、背伸びせず頑張りすぎない「等身大」のスタイルが世界的にも注目されている現在、そういった価値観はファッションだけではなく、メイクやヘア、ライフスタイルにまで大きく広がってきている。そんな中、アスレジャーは「見た目より、着心地、動きやすさ」を重視し、健康的でリラックス度の高いファッションなので、これからさらにトレンドの加速が予想される。あなたも、ぜひアスレジャースタイルを取り入れてみてはいかがだろうか。